2009年  年頭にあたり
  代表理事組合長 鎌谷一也
 
明けましておめでとうございます 新年を迎えご家族皆様が健やかに、良き年となることを心より祈念申し上げます。
昨年は、厳しい畜産環境を訴えるあたり、多くの生協の消費者の皆さんに次のように言ってきました。「BSEのとき危機は、濁流の中で、皆が寄り添い、歯を食いしばって流されないようがんばればよかった。しかし、今の酪農の危機は、闇夜の海で幾日も幾日も続く漂流のような危機だ。お天道さんもみえず、陸地も見えない。全く先の見えない状態だ。乳価に占める所得得二五円が、減少する様は、月給二五万円が、二〇万円になり、そして一〇万円以下に・・・。七割減となる苦しさがわかるだろうか」と。
ここ四〜五年続く危機。乳価下落から、生産調整、その果てが、餌の暴騰でした。本当に、いかに生きのびるかが問われた昨年であり、組合員の皆さんの苦労に本当に頭の下がる思いであります。
やっと、三月からの乳価の引き上げ、そして餌の下落など、少し光明もみえてきたかに思われ、少々ホッというところです。
しかし、全体の情勢を考えると、環境が大きく変わってきています。ホッとできるどころか、酪農畜産だけでなく、社会経済全体が、何年かの漂流時代に突入し、より危機が深まったのかもしれません。
昨年を振り返りつつ、今年への心構えをしっかり持っていきたいものです。
 
食への不信と不安、高まる自給率への関心
 
 昨年は、何が起こっても不思議でない、空恐ろしい時代になったと思いつつ、考え抜き、行動をし、そしてより深く考えるしかない、と決意したものです。
 振り返れば、本当に多くの変化があり、時代の流れが急速に、急激に、変化していると言わざるを得ません。中国餃子問題は、単に食の安全の問題に止まらず、日本の食の自給率・食糧の安全保障の問題まで、国民の意識を喚起してきました。
 とくに、世界でのエネルギー問題や投機市場の影響による、小麦・大豆などの食用穀物市場の高騰、トウモロコシ等の飼料穀物の高騰による畜産危機など、その動きを加速させるものでありました。
 一方、食品に対する不安・不信については、米にもおよび、ミニマムアクセス米を中心にした、三笠フーズによる汚染米問題、飛騨牛の偽装、うなぎ偽装、メラニンの混入等、これほどまでかといった深刻な状況をみせました。本当に、ここ数年続いている食に対する不信を全く反省していない、とでもいうべき事態でした。
 
 耐性のない社会、
悪化がさらに悪化する循環
 
そして、秋以降はアメリカの金融危機に端を発した経済危機、いや恐慌ともいうべき、大不況の始まりです。昨年二兆円の利益を出したトヨ自動車が、赤字に転落するなど、予測しない状況が生じてきています。
 まさに、百年に一度の時代と言われていますが、本当に予測のつかない、そして従来の延長では、捕らえられない時代に突入してきました。
 企業が生き延びるのに、人を人とも思わず、どんどんリストラする動きが顕著です。経済全体がより縮小に向いかねない事態が生じています。本来であれば、社会も企業も、もっと耐性をもち、相互に助け合いながら、持ちこたえていくべき時代ですが、まるで手のひらを返したような、リストラと企業防衛です。全く耐性がありません。
 こうした中、実体経済である農業はもちろん、生産・製造加工を含めた産業がしっかりしなければ、国民や労働者は食べていけない時代かもしれません。
 
 鳥畜の一年は・・・
 
  新しい役員体制での一年でしたが、畜産情勢を踏まえ、何ができたでしょうか。
自給粗飼料の生産体制の強化、組合員の経営支援対策―経産牛や子牛の購入、意思結集、政策要求と実現などの生産課題、また、消費者・生協への畜産に対する理解と支持の呼びかけ、産直の安定、畜産物の安定的な販売、そして人材育成や組織体制の強化など、多くの課題に取り組んでまいりましたが、思うように進んでいない課題もたくさんあります。
 特徴的な点では、子会社美歎牧場の成績が向上したこと。東伯ミートやエフコープなどへの出荷が増加したこと。京都生協での四か月のキャンペーンとミニ懇談会などの開催で次への取り組みにつなげたこと。西部地域での組合員加入が増加するとともに、子牛などの出荷が増加したこと。若い同志会などの仲間の活動が少し定着してきたこと。などがあげられます。
一方、 美歎牧場、コントラクター、東伯ミートなど三年目を迎える組織としての事業や活動のあり方、さらに駅前市場からの撤退など店舗・テナント運営の強化の問題、京都でのインストア対策、販売営業体制の強化、コンプライアンス体制の強化、人材育成、組合員の増加を踏まえた活動や結集のあり方、組合員以外の畜産農家との連携など、より集中的な取り組みが必要な差し迫った課題も浮き彫りとなりました。
 いずれにしても、〇八年で、初めて策定した鳥畜中期五ヵ年計画は終わります。新たな中期計画をどう立てるか、大きな課題です。
 消費者に応える、社会や地域に応える畜産事業を問い、持続をテーマに、生産と生活、そして生消双方の関係の持続的発展を、そのための循環型連携型のあり方を、議論できればと考えています。
 
 当面としての、今年は・・・
 
今年は、従来の延長上で考えるべきでない、変動の年になるではないかと思います。
何が起こるかわからないというよりも、どういう時代にするかが、より強く問われてくる情勢です。従来の価値感や惰性、しがらみに、捉われず、改めて、人間や社会、企業や職場、食や農村社会にとって何が必要か、その価値感が問われる年となると思います。
怒り悲しみと緊張感、怒りは原動力です。批判する力は変える力です。建設的な、積極的な批判力を養い、行動し、また考え行動する。
ただ、情勢が悪くなると、悪いことが重なるように、負の連鎖、悪循環に陥りがちです。事業や企業活動は、外部的な事業活動や要因、さらには内部的な事業・業務・人的な関係など、より密接に絡み合っているため、それぞれの問題の要因と対策をキチット整理し、負の連鎖を起こさないように、気をつけなければと考えています。
 
徹底したコストダウンによる販売を、三割削減を目指すライフスタイルを 
 
 餌の高騰は一段落するものの、将来にわたり経営を維持継続する上で、またコストダウンする上で、やはり自給粗飼料の生産体制の強化・確立は焦眉の課題です。
とりわけ、皆で汗を流し、コストダウンー直接出る経費を削減するーをどう図っていくか、が大切です。
 とくに、農畜産物の販売状況を展望すると、基本的には、売れていくら、消費者に食べて頂いてこそ、生産が持続できるという視点を、重視しなければならない情勢です。そのため、生産現場だけでなく、製造加工部門、販売管理部門、あらゆる分野でのコストの削減、ロスの削減が大切となります。
消費者の皆さんへ、「食べ続ける上で、生産者への理解と支持が必要、連携の強化が大切」と取り組みを強化する必要もあります。しかし、全体的には、厳しい経済環境を反映し、一層のコストのダウン、低価格化が求められる時代となってきます。
 贅沢な消費者であれば、より付加価値の高いものを追求して消費を求めることもできるでしょうが、昨今の状況は、まず食べること、安定して食べつつけれること、が求められそうです。
そうなると、生産者も、経営の持続を前提としつつ、より安価で安心できるものを提供する責任が問われてきます。
また、生産者や職員も生活者です。一〇年ほど前に「三割支出を削減するくらいのか感覚で」と言っていましたが、これからの生活スタイルとして、実際一五%を削減し、残りの一五%は、自分達の汗と知恵でカバーするぐらいのスタンスが求められてくるかもしれません。 
政治情勢も混迷をし、これまた見通しの立てにくい情勢にありますが、消費者・生産者だけで解決できない構造上の問題もたくさんあります。
食や農業など、地域政策の問題を考えると、生産者・消費者が共同行動として、政策要求での解決の取り組みも必要になると思います。
 ある旧町村では、農業センサスでの農業基幹従事者を見ると、六五歳以上が八一%、六十歳未満が一割といった深刻な状態にもなっています。耕作放棄地対策、担い手対策、そうした農村での耕畜連携対策や畜産の役割もますます重要となっています。
最後になりましたが、今年は、干支は「」、そして二〇〇九年で「二九」ニク()の年です。精肉の業界や畜産業にとってよりよい年でありますように、また、皆様のご健康を心よりお祈り致します。